2003 Vol.1 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2003年11月30日発行
内分泌性撹乱化学物質ビスフェノールAとノニルフェノールが海産性
単細胞真正眼点藻Nannochloropsis oculata ST-3株の
増殖に与える影響
石井 洋・齋藤寛・秋山信彦・小林幸夫
要 旨
海産性単細胞真正眼点藻Nannochloropsis oculataから菌株ST-3を確立し,内分泌撹乱化学物質のビスフェノールA (BPA)とp-ノニルフェノール(p-NP)が菌株ST-3の増殖に与える影響を調査した.それぞれの物質を0-18ppm になるよ うに添加し,増殖過程を観察した.両物質とも3ppm の濃度では生育には殆ど影響がなかった.また,培養温度を20℃と30℃ で3ppm の両物質を添加して増殖を調べたところ,BPA では20℃では強い増殖抑制効果が観察されたが,30度では増殖にあ まり影響はなかった.一方p-NP は両温度で増殖を抑制する効果が現れた.また両物質とも20℃の培養で誘導期が約14日間 と長かったが,30度では約5日の誘導期で増殖が始まった.特に実験終了時(25日目)の細胞内のBPA は開始時(0日目) の濃度と比較して20度で7.3倍,30度で1.6倍になった.ゆえに本株は環境中のBPA を生物濃縮する可能性が示唆された.