2003 Vol.1 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2003年11月30日発行
養殖ニホンウナギに発生するウイルス性血管内皮壊死症魚から
分離した ビルナウイルスのSegment Aゲノムの塩基配列の解析
小野信一・若林耕治・永井 彰
要 旨
養殖ニホンウナギのウイルス性血管内皮壊死症魚からビルナウイルスに属するウイルスが分離されている(増田・小野, 1999).そこで,本ウイルス(EBVJ ; Eel birunavirus Japanese)のGenome Segment A の塩基配列の解析を行うともに, IPNV,MABV などの魚類や他動物由来のビルナウイルスとの塩基配列の相同性や分子系統樹から,本ウイルスと既知のビ ルナウイルス26株の異同について検討した.RT-PCR 法およびダイレクトシークエンス法により,EBVJ のSegment A ゲノ ムのLarege ORF を含むほぼ全領域にあたる3,041bpの塩基配列を決定した.Larege ORF は2, 916bpであり,これは IPNV のN1株やMABV のY-6株と一致していた.また,Small ORF(VP5)の塩基数は441bpでIPNV のAb株と同じ 塩基数であった.Segment A 全体での塩基配列を比較すると,IPNV6株中,N1株が最も高く,その相同性は87.4%であっ た.ビルナウイルスの遺伝的な変異の解析によく用いられているVP2/NS 接合領域では,26株中でAb株がEBVJ と最も相 同性が高く,塩基配列で96.8%,アミノ酸配列で,98.1%であった.この領域から推定した分子系統樹では,EBVJ はAb株 に最も類似し,IPNV のゲノグループIIに属していると推定した.