2005 Vol.2 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2005年3月30日発行
大型有孔虫化石からみた丹沢山地の地質構造
門田真人・末包鉄郎・三澤良文
要 旨
丹沢山地には中新統の丹沢層群が分布している.地質構造の中心には大規模な深成岩体があって,典型的なドーム状構 造で知られている.火砕岩類からなる丹沢層群中部・大山亜層群の年代は13〜15Maであり,大型有孔虫や石灰質ナノ 化石から一部地域で決定されているものの,著しい岩相変化と大量のマグマ貫入による変成の影響で全体の層序対比は完 結していない.Matsumaru (1971)は丹沢東部と南部で大型有孔虫化石Nephrolepidina の化石年代を決定している.本 報告では南西部諸戸沢産Nephrolepidina の年代値を決定した.これらのデータに,青池ほか(1997)の丹沢東部早戸川 産石灰質ナノ化石年代データを加えて丹沢全域の層序とその対比について考察した.

本報告では,次の二点について述べる.第一は,丹沢山地南部の山北町諸戸沢には丹沢層群大山亜層群の緑色凝灰岩が 分布している.同層で見つかった中新世の有孔虫密集石灰岩から産するNephrolepidina japonica (Yabe)の化石年代が BlowのN8帯に対比された.第二は,第一の結果を用いて,まだ確立していない丹沢全域の層序対比を考察した.