2005 Vol.3 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2005年7月31日発行
浚渫土の溶出特性に関する実験的研究
井上智裕・福江正治・上原弘次・大木和夫
要 旨
航路や泊地などの維持や海洋環境の保全を目的として浚渫工事が行われており,その度に大量の浚渫汚泥が排出されて いる.これまで,浚渫汚泥の多くは海洋投棄や廃棄物として処分されてきた.しかし現在,浚渫土の海洋への埋立て処分 には,海洋環境保全を目的に規制が設けられており,今後さらに厳しくなる見通しである.そのため,新たな浚渫土の利 用方法が必要となる.本研究では,これらの問題を解決する方法として,浚渫汚泥を肥料として貧栄養化した外洋へ施肥 することを提案する.

そこで本研究では,浚渫土の乾燥・焼成による栄養塩および重金属の溶出特性を把握するため,基礎的実験を行った. 所定の温度により乾燥・燃成させた海底土50g をポリ容器に入れ,そこに所定の塩濃度溶液を500mL 注ぎ,振とう機に より6時間振とうさせ,振とう前,後の水質変化について調べた.

その結果,浚渫土を乾燥・焼成することで,還元的な性質から酸化的な性質へ改善され,乾燥・焼成した浚渫土から栄 養塩の溶出が認められた.また,栄養塩の溶出量は,それぞれ温度により異なり,栄養塩の溶出にはそれぞれ最適温度が 存在することがわかった.このことから,乾燥・焼成した浚渫土は,肥料として有用であることが確認された.