2005 Vol.3 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2005年7月31日発行
震動時における全面付着型ロックボルトの力学的挙動
大和田洋一・アイダン・オメル
要 旨
現在,岩盤構造物の維持・管理計画を立てるために岩盤構造物に対する長期的な安定性の評価が必要とされている.今 回,地下発電所などに代表される岩盤構造物に対し長期安定性に影響を与えると考えられる因子の一つとして,震動時に おけるロックボルトおよびロックアンカーの力学的挙動に着目した.岩盤構造物に建設中あるいは利用中に地震,交通, 発電,発破などによる震動を長期間にわたって受ける.そのような岩盤構造物において繰り返し振動が加わり,不連続面 を有する岩盤内に掘削された空洞周辺で岩盤ブロックの滑り・落下現象が起こるとすると,不連続面を補強しているロッ クボルトの軸力が変化し,破断に至る危険性が考えられる.しかし,現在までロックボルトのこのような力学挙動を検討 された例はない.そこで,本研究において全面付着型ロックボルトで補強した不連続性岩盤モデルを作成し,震動台を用 いて動的な実験を行いロックボルトの震動時の力学挙動を計測した.その結果,ロックボルトやロックアンカーの繰り返 し震動下での力学挙動が計測でき,それに伴いロックボルトやロックアンカーの軸力の増加が発生することが明らかにし た.この結果は,既設の地下発電所などで発生しているロックボルトやロックアンカーの破断する要因を説明する上で貴 重な情報に成り得る.