2005 Vol.3 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部　 2006年3月31日発行
丹沢山地より産出する中新世八放サンゴ亜綱
Heliopora coerulea (Pallas)アオサンゴ化石について
門田真人・三澤良文
要　旨
関東南部・丹沢山地には緑色凝灰岩の厚い地層からなる中新統の丹沢層群が分布している．同層群中には，厚さ数m 〜数10m の石灰岩のレンズ状岩体が点在し，それらの石灰岩からはサンゴ礁生物化石が産出している．そのうちの１つ である人遠地区（神奈川県足柄上郡山北町）の，石灰岩（転石）から造礁サンゴのHeliopora coerulea（Pallas）化石の 大きな群体が複数個発見された，現生Heliopora coeruleaは鹿児島県奄美大島以南のサンゴ礁に棲息していることから考えると，この化石群体の発見は中新世中期頃の丹沢が熱帯〜亜熱帯の古気候下にあったことを示す重要な資料である．これまでに造礁サンゴ類の中での化石産出例が稀少であることから，Helioporidaeの系統史などを探る上でも重要である．