2005 Vol.3 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2006年3月31日発行
異種材料領域を有する薄肉平板の動的応答特性を
利用した非破壊評価手法の検証
川上哲太朗・草加英之・青木由香利・山口 幸
要 旨
現状の非破壊検査法は放射線透過検査や超音波深傷検査が一般的であるが,これらの検査法においては比較的高度な検 査技術や評価技術が必要となる.また,放射性物質の取り扱いなどの安全面,精密検査機器の使用に伴う経済性の問題が あると考えられる.さらに,補修保全が不可欠な時代をむかえ検査数そのものが増加し,検査法の改善,効率化が求めら れている.

本研究は,薄肉鋼製部材を対象に,その健全性を非破壊検査により評価するための簡便的な一次的検査手法の開発を目 的として,薄肉部材内に存在する劣化損傷部(表面からは目視できない裏面側に存在する腐食部や,表面塗装などで覆わ れている欠陥など)を,部材表面を伝播する波動の散乱状態の可視化により検出することを試みるものである.

筆者らはこれまでに劣化損傷部を仮定した円形の異種材料領域(定式化上任意形状可能)を有する薄肉平板の基本的な 波動伝播特性を数値解析により明らかにしている.そこで,本研究では特に,この波動伝播特性を利用した劣化損傷部の 評価検知手法を具体的に提案し,その有用性を数値解析により定性的かつ定量的な検討を行ったものである.