2006 Vol.4 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2006年11月30日発行
魚介類の死後硬直と鮮度(K値)の変化
小関聡美・北上誠一・加藤登・新井健一
要 旨
魚介類の鮮度を評価するため,これら筋肉中のATPの貯蔵に伴う分解生成物を定量した.そしてK値をB/A×100で表したが,Bはイノシン+ヒポキサンチンの合計量,AはATP関連化合物の合計量である.水産動物の筋肉の死後硬直の開始と,それに続く軟化は陸上動物のそれよりも著しく早く起こるが,筋肉中のATP含量は,筋肉の死後硬直の変化と強く関わっていることが知られている.結果的に,筋肉の鮮度をK値を用いて評価する方法が我が国で人気を克ち得たのは,これらの動物の筋肉切片を硬い状態で“さしみ”や“すし”に使うのが好ましいからである.

筋肉の加工食品の種類によっては,K値に加えて,さらに適切な評価指標,たとえば官能的,物理的及び微生物的試験を追加しなければならない.この理由は多くの指標による方がより納得できる製品の品質評価ができるからである.