2006 Vol.4 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2007年3月31日発行
静岡県伊豆半島沿岸海水より単離された真正細菌の
ホルムアルデヒド分解能に関する研究
石井洋・吉田宏亮・井上亮一・山田芳弘・齋藤寛・岡田喜裕
要 旨
ホルムアルデヒド(FA)は,生体に高い毒性を示す物質であり,日本沿岸海域では,産業排水などからの流出により 海洋生物への影響が懸念されている.本研究では,伊豆半島沿岸域より採取した5種類の海水に10ppm FA を添加し, 海水中の微生物に対する影響を調査した.その結果,木負地区サンプルにおいてFA の減少が観察された.その海水から 希釈法により6株の細菌を分離し,各株を10ppm FA に調製した培地中に接種し,その影響の有無を観察した.その結 果,3株(BR-41,ZB-51,T1+1)においてFA は3日間に約95% の減少が観察された.しかし,唯一の炭素源とし てFA のみを添加した場合では,各株とも細胞増殖は観察されなかった.一方,他の炭素源としてグルコースを加えた場 合,BR-41株は,10ppm FA に対して耐性を示し,細胞増殖が観察された.さらに,BR-41株は微量金属元素を添加し た場合では,速い細胞増殖に伴うFA の急激な減少が観察され,12時間以内に90% が減少した.BR-41株については 16S rRNA 遺伝子による解析を行った.その結果,Alteromonadaceae科に属することが推定された.