2006 Vol.4 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2007年3月31日発行
オニテナガエビとクルマエビに対する飼料中の
大豆イソフラボンの安全性
川村拓生・秋山信彦
要 旨
クルマエビとオニテナガエビに対する飼料中の大豆イソフラボンの安全性を調べた.

試験飼料は,魚粉主体の対照飼料(Con-d)にイソフラボンの配糖体を配合したもの(Gly-d),同じくアグリコン体 を配合したもの(Ag-d),比較のためにE2を添加したもの(E2-d)を用いた.

各飼料を与えた結果,オニテナガエビとクルマエビの両種でフィトエストロゲンによる著しい雌性誘導の傾向や生残の 悪化は認められなかった.

オニテナガエビではイソフラボン配合飼料を与えた場合でCon-dの場合より成長が劣っていた.

反対にクルマエビでは,ポストラーバにGly-dを与えた場合に,Con-dより成長が優れていた.一方,稚エビでは Con-dと各試験飼料を与えた場合の成長に差はみられなかった.

以上より,オニテナガエビとクルマエビの種による違いや成長段階によって成長率に若干差異が認められるものの,両 種のポストラーバ以降に大豆イソフラボンを経口投与しても,著しい雌性誘導の傾向や生残の悪化は認められなかった. したがって,本実験のイソフラボンの配合量は飼料全てを大豆にした場合より多いことから,大豆を飼料原料としても安 全であると考えられる