2006 Vol.4 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2007年3月31日発行
清水港(折戸湾)における底生動物の分布構造と
その環境因子との関係
木村賢史・岩田理恵・高木容子・山澤俊宏
要 旨
清水港は,細長く奥域のある形状をしており,最奥部は貯木場やマリーナとして活用されている折戸湾が位置している. そのため,清水港は閉鎖性の強い水域となっている.湾内には,3つの下水処理場からの処理水と巴川等3河川が流入し ている.特に,巴川は清水港に流入するCOD・窒素・リンの負荷量の6〜8割を占めており,湾内の底生動物に大きな 影響を与えている.清水港内の底生動物は,湾内の底層環境の状況をよく反映して有機汚染に強い種が港奥部に出現して いる一方,有機汚染に弱い種が港口部付近に多く出現するなどの傾向がみられた.底生動物と底質との関係では,硫化物 0.2mg/g 未満、強熱減量6% 付近で種数や個体数のピークがみられた.この傾向は,東京都内湾や大阪湾でも同様であ った.1968年当時の底生動物や底質のデータと比較した結果,清水港内の底層環境の改善が示唆された.