2006 Vol.4 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2007年3月31日発行
1994年〜1995年の駿河湾における
マアナゴ(Conger myriaster)葉形仔魚の来遊
望岡典隆・塩澤成子・長坂美紀・久保田正
要 旨
駿河湾におけるマアナゴ葉形仔魚の来遊を,1994年3月〜10月および1995年2月〜12月に湾奥部三保周辺海域でイワシシラス船曳網漁で混獲された試料に基づいて明らかにした.

用いたマアナゴ仔魚は,1994年は2,691個体(全長89.2〜132.1mm),1995年は3,126個体(全長81.0〜125.5mm)の 計5,817個体である.これらのうち,両年の試料から無作為に抽出した1,590個体の総筋節数は139〜149,肛門前筋節数は 101〜121であり,体側正中線付近の点状黒色素胞が体中央より前方にみられることから,これらは全てマアナゴConger myriaster (Brevoort)と同定された.

1994年と1995年における仔魚の出現期間はそれぞれ,3月21日〜5月19日と2月11日〜5月19日であり,出現のピークはそれぞれ4月上旬と3月下旬であった.これらのうちそれぞれ200個体と75個体は総筋節数に対する肛門前筋節数の割 合(PAM/TM 値)が0.8以下の変態期初期の仔魚であり,採集期間を通じて出現した.また,全長95mm 以下の比較的小型の仔魚も採集期間を通じて出現した.両年の全長組成の中で,ほぼ正規型の分布を示した体長モードの移動と経過日数より,駿河湾内に加入後の仔魚の日間成長率は0.70〜0.71mm と推定された.全長組成の変化から,両年ともに仔魚の来遊は連続的ではなく,間欠的であることが明らかになり,来遊期間を通じて大きな新規加入は数回であったことが示唆された.