2006 Vol.4 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2007年3月31日発行
Global Positioning System(GPS)を用いた地震予知の可能性
アイダン・オメル
要 旨
近年,国内外で大地震が起きている.東海地域でも,今後起こるであろう東海地震への恐怖が日々高まっている.地震は, 尊い生命を奪い,住居を失わせ,今まで築いてきた生活の全てを一瞬にして破壊する.また地震には津波や火災などの第二, 第三の災害をもたらす危険性も含まれる.もし,地震予知ができれば,人の命を救うだけでなく,災害を最小限に抑える事も 可能であると考えられる.

本研究で,Aydan (2000,2003)が提案したGPS 測定結果から地表面近傍のひずみと応力状態を求めることができる手法を 紹介した.その手法をトルコ,宮城県北部および中部日本におけるGPS 測定結果に適用した.トルコでの最近の地震の震源 地はほぼ最大せん断応力,破壊接近度応力速度あるいは平均応力速度が大きく発生しているところと一致していること明らか になった.従って,最大せん断応力,平均応力速度と破壊接近度応力速度が集中するところは地震発生の可能性がある場所を 同定する上で有力的な判断基準になると期待される.

宮城県北部地震のようにGPS の測定結果を利用して求めたひずみ速度,応力速度,最大せん断応力速度,平均応力速度お よび破壊接近度応力速度結果から,一日における変動幅が大きいが,週単位で岩石・岩盤のクリープ破壊過程に類似したひず みの変化を鮮明に見受けることができた.よって,M6クラスの中規模の地震でもGPS は地震予知に関して有力的な手段であ り,週・月単位で予知の可能性が高い.しかし,測定精度を高めないと短期予知(日・時単位で)は難しいと判断される. 1997年1月1日から2004年6月30日までの富士,御前崎,および南伊豆のGPS 計測の変位より求めた各種応力速度と地震影 響指数の関係より伊豆沖群発地震時期以外に大きな異常が見受けられない.

東海・関東地域に関して91箇所のGPS 観測点の変位速度より,最大せん断応力の変化,平均応力の変化,破壊接近度応力 の変化を求めた.特に最大せん断応力および破壊接近度応力の変化より,相模湾と東京湾の北部分に大きな変化が見受けられ た.したがって,これらの地域が近い未来に地震発生に影響されやすいと考えられるので,これらの地域は慎重に監視しなけ ればならない.