2006 Vol.4 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2007年3月31日発行
シオミズツボワムシBrachionus plicatilisの培養初期に
おける増殖メカニズム
斎藤俊郎・大森文人・渡部終五
要 旨
本研究では,ワムシ培養時に見られる誘導期,さらには誘導期から対数増殖期前期にかけての増殖メカニズムについて 検討した.

まず,培養開始時のワムシ数が誘導期に与える影響を調べるために,0.6,3および6ワムシ個体/mlの3試験区を設 定し,各5mlの培地で培養した.その際,餌料にはChlorella vulgaris を用いた.その結果,誘導期の長さはそれぞれ約 10,6および3日間となり,培養開始ワムシ数が多い程誘導期が短縮する傾向が見られた.本結果は,誘導期の長さを規 定する原因が,ワムシ自身にあることを示唆している.次いで,ワムシの代謝産物が自身の増殖に与える影響を見るため に,対数増殖期初期由来の培養濾液を用いて25,50,75,100% の各培養濾液添加試験区および培養液のみの対照区でワ ムシを培養した.その結果培養濾液濃度が高い試験区程,対照区に比較してより早く有意(一元分散分析,p<0.05)に ワムシ数が増加し,ワムシの代謝産物が誘導期のワムシの増殖を促進することが示された.