2007 Vol.5 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2007年7月31日発行
ロッコール島周辺の大陸棚境界画定問題
牛尾裕美
要 旨
ロッコール島が載っているロッコール海台及びその周辺の海底が大陸棚として周辺諸国による権利主張の対象となった のは,1974年中頃に当該区域において石油・天然ガスの賦存可能性が認識されるに至ったからである.当該区域における 大陸棚の境界画定は,隣接国及び相対国間の境界画定であると同時に,大西洋の深海底に向かう所謂大陸縁辺部の外限の 決定でもあった.最も早くから当該区域における大陸棚の境界画定に関して競合していたイギリス及びアイルランドは, 1988年の協定によりまず隣接区域での境界画定の決着を見た.その際イギリスは,ロッコール島を基点としなかったこと が注目される.また1985年に至り初めて当該区域に対する大陸棚主張を行ったデンマーク及びアイスランドは,その法的 根拠をロッコール海台との地質学的一体性に求めた.しかし両国も,イギリス及びアイルランドの場合と同様に,国連海 洋法条約第76条における200海里を越える大陸縁辺部の外縁の決定に関する困難な問題を有している.

一方,上記4カ国の大陸棚境界画定において重要な位置を占めるロッコール島の評価に関しては,領有権を有するイギ リス以外は,少なくとも領海は認めるにしても,大陸棚或いは排他的経済水域のような広大な水域を有する資格について は極めて否定的である.