2008 Vol.6 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2008年03月31日発行
「海洋基本法」の制定と今後の課題
−第166回国会での審議を中心として−
牛尾裕美
要 旨
日本の管轄海域(領海,大陸棚,排他的経済水域等)を総合的に開発・利用するとともにその環境の保全をも図ることを目的とした我が国で初めての海洋に関する基本法が本年(2007年)4月に制定された.本法は,その目的と原則を規定した第一章総則,当該目的・原則に則った政府による海洋基本計画の策定を定めた第二章海洋基本計画,当該基本計画に盛り込むべき綱要を定めた第三章基本的施策上記海洋に関する施策を集中的,総合的に推進する組織について定めた第四章総合海洋政策本部から成る.本稿では,当該基本法が審議された第166回国会における議論を通じて,今後政府が海洋基本計画を策定するに当たって問題となる事項を検討した.その結果,主要な問題として,我が国の大陸棚,EEZの調査・開発,効率的且つ安定的な海上輸送の確保を図るための日本船舶の確保及び日本人船員の育成・確保,日本の港湾の国際競争力の強化,海上輸送産業の事業者の経営基盤の強化,海上保安庁の任務の明確化及び組織再編の問題,学校教育における海洋教育の推進,我が国の海洋管轄水域の上記開発・利用に当たっての海洋環境の保全及び外国との海洋環境維持に関する協力関係の構築,近隣諸国との大陸棚及びEEZ の境界画定問題等,が挙げられる.