2008 Vol.6 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2008年03月31日発行
大型船用円筒帆の特性に関する基礎研究
八木 光・藤井昭彦・松原直哉
要 旨
近年の燃料油価格の高騰により船の経済性の向上が求められている.最も直接的な方法は推進効率を向上させることであるが,それに加えて様々な省エネルギー機器を採用することも有効である.従来,各種の省エネルギー効果はあっても投資回収率の問題から実用化されていない技術も多い.しかし,燃料油の高騰により経済性が向上し省エネルギー技術が正当化される例も増えつつある.

ここでは,新たに考案した風力利用の大型船舶用の空気吸込み型の円筒帆について,その基礎的な性能の調査結果を示す.システムの構成は船橋のドジャー支持構造を円筒型とし,船内空気取り入れ口を設け,船が本来持つ空気吸い込みエネルギーを用いて円筒部周りに循環を生じさせることにより揚力を発生させ,推進力として利用しようとするものである.

吸込み量や吸込み方法などに関して風洞による実験的研究を行った結果,円筒帆の発生する揚力係数は約7.5が期待でき,大型船への適用した場合の期待効果を定量的に検討し,実用化の可能性をもつことを示した.また,流向,流速分布などを調査することにより,円筒帆の揚力発生のメカニズムも明らかにした.