2008 Vol.6 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2008年07月30日発行
『マーディ』での若きメルヴィル−(1)
−喪失と幻滅−
五十嵐博
要 旨
太平洋での放浪経験と合わせて,メルヴィルの結婚が第3作『マーディ』の背景となった.『マーディ』は彼の全著作中で最も長い作品で,架空のプロット,登場人物,場面には寓意的・象徴的意味が宿されている.作者の結婚がこの寓意ロマンスのテーマの素材となり,主人公は失われた理想の純潔をむなしく探求する.