2008 Vol.6 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2008年07月30日発行
「駿河湾奥部大陸棚の地質構造」
梶琢・根元謙次・山崎晴雄・生野静香・松田健也
要 旨
駿河湾は,フィリピン海プレート北縁のプレート沈み込み境界である駿河トラフが存在する構造性の湾である.駿河湾の海底地形については潜水船をはじめ多くの研究がなされてきた.その結果,駿河トラフの東側斜面には伊豆半島の基盤が露出するのに対し,西側斜面には固結度の高くない堆積岩が分布し,急斜面と平坦面が繰り返すスラスト構造が認められる.また,駿河トラフ西側には石花海堆,石花海海盆といった外縁隆起体や前弧海盆がみられる.このように駿河トラフを境に東西の地質構造が異なることが知られている.同様にして,駿河トラフ延長の陸側の構造も調査されており,富士川周辺地域には南北走向の断層帯が認められている.しかし,富士川前面の大陸棚から大陸棚斜面にかけては,富士川からの大量の堆積物供給による富士川扇状地が発達しており,駿河トラフと陸側との接続部の地質構造については良く知られていない.本研究では,シービームによって得られた詳細な海底地形データと音波探査データをもとに,駿河湾奥部の大陸棚から大陸棚斜面にかけての地質構造を明らかにした.特に音波探査断面よりWurm 最終氷期の浸食平坦面の分布を明らかにし,Wurm以降の構造運動を明らかにした.その結果,富士川沖以西で音響基盤が隆起していることが認められた.これは駿河トラフ西側の階段状構造や富士川河口断層帯の構造と調和的である.また,海底地形データも用いることにより,堆積構造と地形の関係についても考えた.