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要 旨 |
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近年,海洋アジア地域では,工業化が急速に進行している.その背景の一つに,欧米産小麦の大量輸入がある.これに
より,労働力が農村部から都市部の工業部門へと移動可能となった.加えて,欧米産小麦は,モンスーン・アジア地域の
主食であったコメよりも低価格であったため,都市労働者の食費や生活費が低下した.日本では,1960年代から始まっ
た,欧米産低価格小麦の利用による食費の節約は,第一に,貯蓄率の上昇とそれに伴う投資額の増加,第二に,教育水準
の上昇とそれによる優秀な労働力の増加,そして第三に,家電製品の国内市場の拡大をもたらした.よって,欧米産低価
格小麦の大量輸入は,日本の高度経済成長に,大いに貢献したと言える.そして,日本と同様の,都市への人口流入とそ
れに伴う小麦輸入の増加が,韓国でも60年代以降に,マレーシアでは80年代に,そしてタイでも90年代に生じている.他
国でも,日本と同様に,低価格の輸入小麦が,経済成長に大いに貢献していることが,推測される. |
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