2008 Vol.6 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2008年07月30日発行
初期カルデラ形状をコントロールするファクタ;
数値シミュレーションによる定量的な推定
楠本成寿・竹村恵二
要 旨
初期カルデラ形状をコントロールする重要なファクタは,マグマ溜りの半径と深さ,そして地殻の弾性定数であることを,本研究で明らかにした.マグマ溜りの崩壊を弾性体中の小球の収縮で近似し,弾完全塑性体の仮定の下,クーロン破壊基準を用いて地表面の破壊領域の分布を計算した.その結果,じょうご型カルデラとピストン型カルデラは,同じ崩壊メカニズムと物理プロセスにより形成されることが明らかになった.また,カルデラの形状は,マグマ溜りの半径と深さ,そしてカルデラ半径とマグマ溜り深さの間の線形関係を説明する比例係数によりコントロールされることが明らかにされた.ポアソン比,ヤング率,圧縮強度,内部摩擦角がほとんど全ての火成岩をカバーするような広い範囲で与えられた場合,その比例係数は,ポアソン比に強く依存していることが明らかにされた.また,カルデラ形成に必要とされる体積変化量は,マグマ溜りの深さの3次式によって記述されることが明らかにされた.各係数の物理的な意味は現段階では不明であるが,多項式の3次の項が最も重要な項であることが示された.