2009 Vol.7 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2009年09月30日発行
日本の湖と水田から単離したバクテリアの最適生育条件と細菌によるミクロシスチンの利用
佐藤舞・石井洋・安部俊彦
要 旨
アオコ毒素ミクロシスチンを分解するS5,S6,7CY 株について,培養温度を25〜50°C,pH を6.0〜10.0,LB 培地濃度を1倍,1/2倍,1/4倍として培養し,生育速度定数(kg)を比較した.S5株は35°C,pH7.0,×1/2LB,S6株は35°C,pH8.0,×1/2LB,7CY 株は35°C,pH7.0,×1LB で最も高いkg を示し,これらの条件におけるそれぞれの株の平均世代時間は1.8,1.7,2.4時間であった.また,最少培地M9でこれら3株を培養したところ,S6株のみが生育した.さらにこのS6株にミクロシスチン-LR,-LY,-LW,-LF を添加したところ,本株はこれらすべてのミクロシスチンを分解し,-LR の分解速度は0.59μg・ml-1・day-1であった.さらに,この株にミクロシスチン-LR を添加した場合と添加しなかった場合で生育を比較したところ,-LR を添加した場合の生育速度は添加しなかった場合の2倍であった.以上の結果より,アオコとこれらの分解菌の生育条件はほぼ一致しており,アオコが発生する湖沼にはこのような分解菌も生息し,アオコが消滅したのちに湖水に残存するミクロシスチンを分解しているものと推定される.また,S6株はWHOが定めた飲料水の基準値(1μg・L-1)や自然環境においてアオコが発生している湖沼に存在するミクロシスチンを分解するには十分な能力を有すると考えられる.