2009 Vol.7 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2010年01月30日発行
深層心理学に基づく臨床心理学からのウェーバー,
ニーチェの心理と精神障害について
山口豊・窪田辰政・金木悟
要 旨
マックス・ウェーバーとフリードリッヒ・ニーチェは,社会学界,哲学界の大巨人であるが,彼らの学問論は,そのまま彼らの心理行動を反映している.ウェーバーは,過度に意識への信頼を置いて神経症になり,ニーチェは,無意識に魅せられて一体化しようとして精神病になった.これら両巨人の心理行動は,深層心理学で望まれる意識と無意識の統合とは異なって,意識,無意識どちらか一方にだけ偏ったものであった.全体性を生きない心理行動は,生を破たんさせる危険があることをこの二つの事例は表しているといえるだろう.ここから,深層心理学に基づく臨床心理学の目指すバランスの良い心の成長が重要な意義を持っていることが理解できる.