2010 Vol.8 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2010年04月20日発行
藍藻のカビ臭物質の同定と生育に伴う濃度変化に関する研究
岩瀬理子・安部俊彦
要 旨
藍藻オシラトリア3種とフォルミディウム6種において,カビ臭物質の同定と生育に伴う濃度変化を検討した.パージトラップGC-MS分析により,M-71株からはカビ臭物質であるジェオスミンが,NIES-512株からは2-MIBが検出された.ジェオスミン濃度は,培養開始後24および288時間においてそれぞれ190,31 ng・(L culture)-1・A720-1であった.
一方,2-MIB濃度は,培養開始後50および312時間においてそれぞれ3.0,18pg・(105cells)-1であった.これらの結果から,定常期における2-MIB濃度はジェオスミン濃度の200倍以上であり,また,細胞あたりの2-MIB濃度は細胞増殖に伴って増大し,逆にジェオスミン濃度は低下することが示された.
生育温度と2-MIBの生産量の関係を調べたところ,NIES-512株は10-35℃で増殖し,25℃における2-MIB濃度がもっとも高かった.特筆すべきことに10℃ においても2-MIB は生産された.
以上の結果から,冬季であっても貧栄養条件であっても,カビ臭の主な原因物質である2-MIBは発生することが示唆された.