2010 Vol.8 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2010年04月20日発行
医学書の乳海攪拌神話
瀧川郁久
要 旨
乳海攪拌神話は、古典的なインド神話のうちでもっともよく知られた挿話のひとつである。この物語は、チベットの医学絵画にも、毒物の起源の説明として現われている。このチベット版は、叙事詩・プラーナ文献とはやや異なる、独特の挿話を含んでいる。そして、このような挿話と類似した記述が、インドの医学書に見いだされるのである。これらの異本を比較することによって、周知の叙事詩・プラーナ文献の伝承とは異なる、もうひとつの伝承を見いだすことができるであろう。