2010 Vol.8 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2010年04月20日発行
玄奘訳の疑問辞「頗有」
瀧川郁久
要 旨
漢訳資料によってインド仏教を研究しようとする場合,漢訳仏典特有の用語法に十分注意する必要がある.特に,論書で議論の流れをとらえるためには,サンスクリット語の文法的な機能をもつ単語が,どのように漢語に移されているかを正確に理解することが重要である.構文法の比較研究の一例として,本稿では『阿毘達磨倶舎論』における中古漢語の疑問辞「頗有」とそれに対応するサンスクリット語syatを検討する.