2010 Vol.8 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2010年10月30日発行
海底資源探査に向けた磁気探査装置の開発
−R/V「よこすか」YK09-09 航海における実海域試験−
原田誠・佐柳敬造・伊勢崎修弘・笠谷貴史・澤隆雄・浅田美穂・
多田訓子・市原寛・後藤忠徳・野木義史・大西信人・松尾淳
要 旨
著者らは,海洋資源の利用に向けた基盤ツール開発の一環として,海底下の構造を高精度に推定するために,AUV や曳航体などを用いた精密磁気探査装置の開発を行っている.本論文では,2009年7月に実施したR/V「よこすか」YK09-09 航海における実海域試験のうち,自律式無人探査機「うらしま」(以下,AUV)を利用して行った潜航実験の結果を中心に紹介している.本試験では,ネオジム磁石と鉄棒からなる「磁気ターゲット」を深さ2,058m の海底に設置して,2台のフラックスゲート(FG)磁力計とオーバーハウザー(OVH)磁力計を搭載したAUV を潜航させた.AUV の磁化の影響を除去したところ,磁気ターゲット近傍の高度20〜30m において,明瞭な磁気異常を検出することができた.空間分布の特徴は,予め陸上で測定した磁気異常から推定した結果とよく一致した.これは,本装置が深海底でのAUVを用いた磁気探査に有効であることを意味している.一方で,本試験によって,1.測定機器やデータロガーの時刻精度の改善,2.複数の装置のデータ収録時の同期性の問題,3.AUV の位置精度の向上,4.人工ノイズの除去手法の開発,5.OVH磁力計の設置方法等の課題が明らかになった.