2010 Vol.8 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2010年10月30日発行
駿河湾における1998-2007年級のサクラエビの資源量推定
佐久間拓也・福井篤・保正竜哉・魚谷逸朗
要 旨
駿河湾における1998年級から2007年級までのサクラエビの資源量を,体長組成および漁獲量データなどに基づいて,Virtual population analysisによって推定した.各年級の初資源尾数(N1)は46.1-119.2(平均±標準偏差82.6±23.7) 億尾,初資源重量(B1)は801-2,577 (1,888±585) トンと推定された.これらのN1は1961-1965年級の1/40-1/3の水準 に留まっていた.親世代(y-1年級のN4とB4)と子世代(y年級のN1とB1)の資源量の比N1/N4およびB1/B4は, 産卵期の平均水温と正の相関があり,平均水温が高いほど増加する傾向が認められた.従って,加入量を決定する要因には,産卵期の平均水温があり,卵や幼生期の生残に水温が強く関与していることが示唆された.2004年秋漁期の不漁は, 黒潮の大蛇行の影響によって0歳群(2004年級)の漁獲加入が遅れたことに加え,1歳群(2003年級)の資源量が著しく 減少していたことに起因した.