2011 Vol.9 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2011年3月20日発行
静岡県の小河川下流部で採集された黄ウナギ期のニホンウナギは、どのような筒を選択するか?
朝倉孝志・熊谷俊介・後藤寛史・赤川 泉
要 旨
静岡県の新川・大橋川下流で採集された、黄ウナギ期のニホンウナギAnguilla japonicaによる巣の選択について調べるために飼育実験を行った。多くの個体が、利用できるなかでも最長の筒を好んだ。大半の個体はいくつかの筒を試した後、自分の全長より長い筒を選んで入り、筒の端近くに頭部を置いて留まった。筒の内径選択実験では、体高が20mmより高い個体(全長約500mmより大)は内径選択がばらばらであったが、体高20mm以下の個体では、体高の3倍より大きな内径の筒は選択せず、体高の2倍程度の内径の筒をよく選択した。このことから巣の内径選択は小型個体にとっては重要と示唆された。また、ニホンウナギの巣の選好性は、種内競争と捕食圧が変化することによって、成長とともに変わるのではないかと考えられた。シェルターとして十分な長さと様々な内径の筒を用いて、河川における黄ウナギに適したマイクロハビタットとして、特に下流部において人工的な巣穴などの充実を図れば、ウナギが自由に行き来したり滞在することができて、個体数の増加に繋がるかもしれない。