2011 Vol.9 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2011年3月20日発行
DNAの欠失領域を用いた栽培イネOryza sativa L.の
熱帯ジャポニカ型と温帯ジャポニカ型の識別マーカの作出と
登呂I期遺跡から出土した炭化種子への応用
花森功仁子・石川智士・齋藤寛・田中克典・佐藤洋一郎・岡田喜裕
要 旨
14カ国に由来する温帯型と熱帯型を含むジャポニカ型イネ31系統と,11カ国に由来するインディカ型イネ23系統,合わせて54系統を用いて,温帯・熱帯ジャポニカ型の遺伝的相異点を調べた.その結果,第6染色体上に221塩基の欠失/挿入領域(DJ6領域)を発見した.この領域では温帯ジャポニカ型は欠失を示し,熱帯ジャポニカ型とインディカ型は非欠失を示す.このDJ6領域にPCRプライマーを10個設計し,これらを用いて,温帯・熱帯ジャポニカ型の識別手法を開発した.また,このプライマーを用いて,弥生時代後期の登呂遺跡第1期の地層から出土したイネ種子の型判別をおこなった.その結果,温帯ジャポニカ型と熱帯ジャポニカ型のDNAを持つ雑種1点と温帯ジャポニカ型2点が検出された.このことから,弥生時代後期には温帯ジャポニカ型と熱帯ジャポニカ型が栽培されており、両者のイネが自然交雑していたことが示唆された.