2011 Vol.9 No.3「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2011年3月20日発行
静岡県折戸湾内より単離された海産性細菌の高濃度
ホルムアルデヒド条件における馴化に関する研究
石井 洋・前田 孝史・井上 亮一・齋藤 寛
要 旨
産業や家庭排水などから海水域に流入する汚染物質の一つであるホルムアルデヒド(FAD)は,ヒトやその他の生物に対して強い毒性を示す物質であり,海洋生物への影響が懸念されている.本研究では,静岡県清水区折戸湾沿岸域の4点から採水した後,10ppmFADを添加し,その濃度の減少の有無について調査した.その結果,巴川河口海水においてFADの急激な減少が観察された.その海水から希釈法により9株の細菌を分離し,その中でもSMM-7株は50ppmFADに対して3日間で完全に減少した.続いて,SMM-7株の高濃度FADに対する影響を調査したところ,300ppmFADの条件まで増殖が観察された.また,300ppmFADで株を繰り返し培養し馴化をすることで,続けて増殖不可能だった500ppmFADでも増殖が観察された.さらに,同様の方法により500ppmFADで馴化した後,750ppmFADで適応させることが出来た.以上のことからSMM-7株は低濃度での増殖と顕著な分解が観察され,さらに順次馴化させることにより,高濃度のホルムアルデヒドで適応し増殖可能なことが確認された.