2005 Vol.3 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2005年7月31日発行
数学教育における『問題解決』と創造性育成
─4次元超立方体をノートに描く─
渡辺 信
要 旨
問題解決の授業の重要性を,実際に行ってきた授業を参考にして考察した.特に数学教育は抽象的な事柄を扱うがゆえ に,問題解決の授業を行うことは重要なことであることがわかった.具体的に4次元世界を見ることはできない.しか し,数学ではn次元世界をいとも簡単に扱う.結果的には何も理解できないままに,授業は終わってしまい評価される. 今,数学教育をはじめとして多くの授業が知識伝達になっていることを改めて,問題解決の授業のあり方を問う必要があ る.問題解決の授業を行うにあたり必要なことは,授業の環境整備である.何も補助的手段のない状況で学生にただ考え ることを強要しても,考える素地がない.考えることの重視は,考える「場」を設定すること・考える補助的な道具を与 えることである.現在の教育環境を改める必要性を感じると共に,日本の教育の欠点は「問題解決」という言葉だけが独 り歩きしていることである.授業を改善することによって,学生の考える姿勢を身につけることが可能となり, 創造性育成の方向が明確になる.学生が考えることによって授業展開が行なわれ,学生によって作り出された 数学を教師と共に考え楽しむ授業の可能性を求めることが可能になった.