2006 Vol.4 No.2「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2006年11月30日発行
キンギョ(ランチュウ品種)の頭部肉瘤の組織学的観察
鈴木伸洋・谷津正洋
要 旨
ランチュウの頭部肉瘤は,表皮層・基底膜・真皮層・皮下組織の各層を通して形成されていた.頭部各部位別の肉瘤の発達程度によって分けられる品種の型である「ときん」,「獅子頭」,「おかめ」における頭頂部・眼窩下部・鰓蓋部の3部位での肉瘤の組織構造の違いは観察されず,肉瘤が肥厚している個体では,表皮層と真皮層が互いに乳頭状に陥入して入り組んだ複雑な形態を呈していた.また,個体の成長が良好であるほど肉瘤は肥厚し,乳頭状突起は高度で深く陥入する傾向があった.肉瘤の肥厚は個体の成長に応じて発達することが推測され,栄養状態による影響を強く受けることが示唆された.肉瘤は柔軟で厚く,乳頭状陥入が真皮の疎性線維層の著しい肥厚を構造的に支える役割を担っているものと考えられた.肉瘤は,表皮と真皮疎性線維結合織の瘤状増殖による著しい肥厚が原因であり,表皮の乳頭腫による腫瘍性表皮増殖によるものではないことが明らかになった.