2008 Vol.6 No.1「海ー自然と文化」東海大学紀要海洋学部  2008年03月31日発行
複合型二周波同軸集束音源の非線形音場
斎藤繁実・秋山いわき・吉住夏輝
要 旨
超音波画像におけるスペックルノイズを効率的に除去するために,著者らは異なる周波数で得られた多数の画像を重畳する方法を研究している.このような条件を簡便に成立させるため,もとの2つの線形音波,各ビームの非線形伝搬によって生成される2つの第2高調波,2つの1次波ビームの非線形相互作用によって生成される差および和の周波数の音波という異なる周波数の6つの音響ビームが強く励振される,二周波同軸集束音源を使うことを提案している.本論文では,それら6種類の音場に対する線形もしくは準線形の解を,Khokhlov-Zabolotskaya-Kuznetsov方程式の逐次近似解で求めている.解析は,水カップラの層と生体媒質をモデルとする他の減衰の大きい層という2つの領域で行われている.線形成分の解は単積分で表されるが,非線形成分の解は4重積分を含む複雑なものである.数値計算を簡単化するため,後者の解は積分指数関数を用いた3重積分に近似している.本解析の妥当性は,2MHz と8MHz の同軸集束音源が水中に形成した音場について,計算と実験を比較することにより確かめられている.2MHz,4MHz,6MHz,8MHz,10MHz の音場の解析結果は実験で観測される音場とよく一致している.